暇な時間は映画を観ます

映画について語ります

ジョジョ・ラビット(2020年)

ジョジョ・ラビット』
原題:Jojo Rabbit

主人公はドイツに住む10歳の少年、ジョジョ
第二次世界大戦下、ドイツではナチスによるユダヤ人迫害が横行。
彼もナチスの偏った教育を受けた子供の一人。

そんな彼の家には衝撃的な秘密が隠されていた!

イマジナリーフレンド、アドルフ・ヒトラーとのやり取りを通じて、大人の階段を上るジョジョの成長物語。
人って何なんだ?戦争って何なんだ?人を愛するって何なんだ?
無垢な少年の心にタイカ・ワイティティ監督が問いかける、楽しくもうるっとくる作品です。

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2020年アカデミー賞の6つの部門でノミネートされている、大注目作品。
少年の脇を固める俳優陣も、きらりと光る大御所ばかり。
音楽も良い、衣装も良い、テンポも良い、2時間があっという間でした。


そして、ジョジョを演じたローマン・グリフィス・デイビスが超絶可愛いです。

 

www.foxmovies-jp.com

 

 

 

【※以下、ネタバレあり※】
【※未鑑賞の方は読まないことをオススメします!※】

 

 

 

 

ジョジョは勇敢なドイツ兵になるべく、青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加。そこで先輩に「ウサギを殺せ」と脅され、臆病な性格をいじられてしまいます。その場を逃げ出したジョジョはイマジナリーフレンド・ヒトラーに励まされます。
「ウサギは臆病な動物なんかじゃない」
一気に走り出したジョジョは手榴弾練習に突っ込み、負傷。
実家に戻されます。 

そこからジョジョの「ユダヤ人って何だろう」生活が始まります。

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IMDbより

まず、大切な人物2人について語ります。

一人目はスカーレット・ヨハンソンが演じたジョジョのお母さん。
おしゃれで気高く息子愛に満ちた姿に誰もがうっとりとするでしょう。
実はこのお母さん、ドイツは負けると確信しており、ドイツ開放運動をひそかに行っていた活動家。そのせいで首つり処刑されてしまうという衝撃の展開。


いや嘘でしょ、待ってよ、だってあんなに颯爽と歩き、愛を語り、ダンスし、魂の開放を叫んでいた彼女が、え、どうして…


ジョジョと同じ絶望を観客に突き付けてくる、なんて残酷な…。戦争に行った人だけが命を落としたのではない、誰よりも明日の平和を願っていた人が抹殺されるなんて…
首をつるされている母親の靴紐をジョジョが一生懸命結ぼうとするシーンは、今でもはっきり思い出せます…

 

二人目はサム・ロックウェルが演じた大尉。ジョジョの上司です。
(渋かったなあ…)
大尉はジョジョの良き相談相手であり、救世主でもありましたね。
秘密警察がジョジョの家に踏み込んできたとき、なぜ彼は来てくれたのか…?
亡き姉インゲの身分証明書をユダヤ人のエルサのものだと見過ごしてくれたのはなぜだったのか…?
私が思うに、大尉はドイツが負けること、ジョジョのお母さんが活動家だったことやエルフのことも知っていたのではないかと思いました。だから、子供であるジョジョを守ったのでないかと感じました。

そう、この映画は

出てくる大人が全員悲しすぎるんです。

秘密警察は説得の余地がないし、ヒトラーが死んでもドイツ兵として戦争を続けなければならないし…
だからジョジョのお母さんのように、自分の考えが正しいと思っても、子どもを守りたくても大きな声を出せなかった。それが戦争の最悪な部分ですよね…

 

さてさて、ジョジョに話を戻しましょう。

彼は家に隠れ住むユダヤ人エルサを見つけて、衝撃を受けます。

彼女と話をするようになって、
ユダヤ人といっても僕たちと変わらない。角も生えていない。見た目じゃわからない。悪い人じゃない。」
ということに気づき始めます。

ジョジョが手紙を書くシーン、読むシーンがとても良かったですね。 

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IMDbより

ついに戦争が終わります。同時に彼の決意も固まります。

きわめつけのセリフは…

"F**k off Hitler!!!!"

彼の中のイマジナリーフレンド・ヒトラーを蹴飛ばします。(ここ爽快(笑))
新しい時代へエルサとともに歩き始めます。この流れが最高に良かったです。あんなにナチスに傾倒していた臆病なジョジョが、

"F**k off Hitler!!!!"

なんて言葉を口にするなんて!!(笑)
コラァ!!と言いたいところですが…いや違う!!

よくやった、ジョジョ!!

そう抱きしめたくなりました。

 

タイカ・ワイティティ監督は

「広めるべきはヘイトじゃない、寛容と愛だ」

とコメントしています。

ジョジョが気づいたように、ユダヤ人でもそうでなくても、人間は見た目は変わらない生き物。差別すること自体、無意味。誰かよりも偉いとか優れているとかレベルをつけてはいけない、すべてを受け入れること・信頼すること・誰かを愛すること、これがジョジョを通して私たちが学ばなければならないことだったのではないでしょうか。

(戦争映画なのに)楽しく、ユーモラスな部分があるかと思えば、地獄に突き落とすような出来事もある、メッセージ性もある。斬新な映画でした。

彼と同じ、10歳の少年少女にも観て欲しい作品です。
どんなふうに感じるかな…?